耐久性能 ~雨漏れを防ぐ
木材が劣化する原因は大きく3つです。
①地震や台風などの外力による変形
②直射日光や風雨などによる劣化
③菌類(キノコ)による腐朽、虫(シロアリ)による食害
です。
今回は原因②の風雨などによる劣化について書きます。
住宅が完成した後の風雨対策、つまり雨漏れ対策です。
住宅品質確保促進法に定める基本構造部分として、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分があります。
住宅供給業者は新築の場合、引渡しから10年以内に基本構造部分に瑕疵が発見された場合、修理する義務があります。
瑕疵保険に加入している業者が保険を利用して修理することを保険事故といいます。
以下の円グラフは、保険事故が発生した部位を表したものです。
保険事故の93%(青い部分)が、『外壁・屋根からの雨漏り』、
構造は6.7%(赤い部分)です。
雨漏り部位は、多い順に外壁29%、屋根22%、開口部25%、バルコニー15%です。
最近はキューブ型住宅などの軒ゼロ形状、緩勾配屋根が流行っていますので、雨漏り事故の増加が予測できます。
軒が深い住宅に比べて、外壁や開口部への雨掛かりが多くなり、屋根の勾配が緩くなると雨水の滞留時間が長くなるためです。
形状的にも雨漏れリスクが高まりますし、雨仕舞作業の難易度も高まります。
軒ゼロ(破風・鼻隠しなし)は外壁と屋根の防水下地を連続させる必要があるのですが、施工業者が切り替わる部分なので取合い部分の連携が上手くいかないことがあります。
外壁の頂部で通気層を屋外に開放する必要があるのですが、軒ゼロのため雨仕舞が難しいことも原因です。
今は専用の部材もありますので、コストは掛かりますが、雨漏れ防止の観点から使用したいところです。
1次防水層(外壁仕上げ面)から内側に浸入した雨水が通気層内でせき止められる漏水しやすい場所に、防水層を貫通する開口部周り、配管等の貫通部周りにも専用の防水材があります。
こちらも専用の部材があります。
そして、表面に見える屋根材、外壁材のデザイン、耐久性、メンテナンスのしやすさと併せて注目してもらいたい材料があります。
その裏側で雨漏れを防いでくれる屋根のルーフィング、外壁の防水透湿シートという防水部材です。
もっとも重要な防水部材のひとつです。
建築業者さんが何を使っているのか確認することをおすすめします。
屋根のルーフィングという下葺き材料は「JIS A 6005 アスファルトルーフィング940」 適合品が使用されます。
適合品の中にもたくさんの種類があり、耐用年数、遮熱性能、透湿性能等に応じて価格が異なります。
一番注意していただきたいのは耐用年数です。
一般的なアスファルトルーフィングは10年、改質アスファルトルーフィングは20~30年、超高耐久改質アスファルトルーフィングは40~60年です。
80年の耐久試験に合格している商品もあります。
下葺き材は比較的簡単に交換できる仕上げ材と違い、簡単には交換できません。
仕上げ材を撤去し、下葺き材をはがす必要があります。
下地材に合板を使っている場合は合板が蒸れて劣化していることもあります。
冒頭で述べましたが、住宅の供給業者が雨漏れの瑕疵担保責任を負うのは「10年間」です。
何年使いたい住宅なのかにもよりますが、長期優良住宅であれば耐用年数は少なくとも耐用年数40~60年の商品を採用していただきたいです。
材料費はもちろん上がりますが、金額としては数万円で、20~30年後に張り替えもしくは下地合板まで交換ということを考えればライフサイクルコストは低減します。
透湿性のあるルーフィングを使用し、通気層も設けると耐久性はさらに高めることができます。
通気工法の外壁の防水透湿シートは「JIS A 6111:2016 透湿防水シート」適合品が使用されますが、こちらも商品の性能によって耐用年数が異なります。
一般的な商品は保証年数が10年ですが、施工中の紫外線や防蟻防腐剤でも劣化が進みます。
デュポン社のタイベック・ハウスラップはメーカー保証20年です。
少なくともこの商品は採用していただきたいです。
さらに長期使用を目指すなら80年の耐久性能が認められた商品もあります。
住宅を何年持たせたいのかを考え、イニシャルコストではなくライフサイクルコストでの計画をおすすめしています。
耐震性能、断熱性能をせっかく高めるなら、その性能を長期間持続できるように雨漏れを防ぐ部分にも気を使いましょう。
私たちはそれこそが長持ちする住宅をつくるポイントだと考えています。
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