『長期優良住宅』は本当に100年使えるのか
誤解の無いように最初に申し上げますが、私たちは長期優良住宅をおすすめしています。
こんなタイトルを付けた理由は、長期優良認定をとるだけでは意味がないと考えているからです。
長期優良住宅とは、2008(平成20)年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」で規定されています。
目的が第1条に書いてあります。
要約すると「国民生活の向上と環境負荷を低減するため、良質な住宅をつくり長期間使えるように必要な措置を講じ維持管理する」となります。
第1条全文はこのブログの最後に記載しておきますので、興味のある方は読んでみてください。
具体的には、
①長期に使用するための構造及び設備を有していること
②居住環境等への配慮を行っていること
③一定面積以上の住戸面積を有していること
④維持保全の期間、方法を定めていること
⑤自然災害への配慮を行っていること
上記すべての措置を講じて、長期優良住宅の認定をうけることができます。
①の中で、長期に使用するための構造について考えてみます。
長期(3世代90年)に使用するには、何が大切なのでしょうか?
新築時の躯体性能を維持することが一番大切だと考えています。
構造躯体の性能は新築時をピークに劣化していきます。
木造住宅の構造部材は当然ですが、木です。
木材は法隆寺の事例でも分かる通り、長期仕様が可能な天然素材です。
環境保護の観点からも生育時に温暖化ガス(CO2)を貯蔵し、木材の中に固定してくれます。
製材や加工に必要なエネルギーも少なくてすみ、地球温暖化防止の役にたつ優れた材料です。
長期使用することが、環境の保護につながるんですね。
では、木材の劣化の原因はなんでしょうか?
①地震や台風などの外力による変形
②直射日光や風雨などによる劣化
③菌類(キノコ)による腐朽、虫(シロアリ)による食害
などです。
それぞれの対策は、
①は自然現象なので仕方ないと思われるかも知れませんが、実は耐震性能を高めることが対策になります。
前回のブログで書いた耐震等級3です。
耐震性能を高めると構造躯体の変形量が少なくなるからです。
②は施工中の雨対策が重要です。
雨対策は土台を敷いて上棟した後、雨仕舞ができるまでの間、雨に当てないように養生することが肝心です。
③は②と同じく施工中に雨に濡らさないことと、やむを得ず濡れてしまった場合は完全に乾かしてから壁をふさぐことが大切です。
①~③の全体を通して、雨漏れを防ぐつくりにすることも考慮したいところです。
長期優良住宅の認定を取得するのは、それほどコストもかかりませんし、技術的にも難しいことではありません。
しかし、認定取得は目的ではありません。
実際に長期間使用できる住宅をつくることが目的です。
木材の劣化を防ぐための設計と施工、入居後の維持管理を適切に行うこと。
使用材料の選定、施工方法の決定など、設計者もしくは建設会社、施工会社の知識・技術・モラルが問われるところです。
雨漏れしない工事をすること、防水材料は長持ちするものを選ぶこと、雨漏れしないつくりにすること等、認定で評価できない部分も大事にしてください。
もちろん、予算には限りがあります。
何を優先するか、交通整理をして、バランスを取りながら設計することが肝心です。
別のブログで具体的に書いていきますので、そちらも参考にしてください。
最後に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」より第1条(目的)を抜粋します。
「この法律は、現在及び将来の国民の生活の基盤となる良質な住宅が建築され、及び長期にわたり良好な状態で使用されることが住生活の向上及び環境への負荷の低減を図る上で重要となっていることにかんがみ、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備について講じられた優良な住宅の普及を促進するため、国土交通大臣が策定する基本方針について定めるとともに、所管行政庁による長期優良住宅建築等計画の認定、当該認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づき建築及び維持保全が行われている住宅についての住宅性能評価に関する措置その他の措置を講じ、もって豊かな国民生活の実現と我が国の経済の持続的かつ健全な発展に寄与することを目的とする。」
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